*基本データ
場所:茨城県日立市高鈴町5丁目2(たかすず)
行った日:2019/01/13
廃墟になった日:1970年代
詳しく:高鈴台団地の近くに隣接して2軒のラブホテルがある。これはその片割れ。どちらも廃墟。
*評価
怖さ:★★☆☆☆
廃れさ:★★★★☆
見つけやすさ:★★☆☆☆
*あれこれ
今でこそ男女平等なんかが叫ばれてから様々な動きや対策が講じられてきているけれど、それでも雑誌やインターネットを覗けば、デートにおけるリーダーは男性が率先的に務めて当たり前という考えが根強いように思う。デートというか、男女の仲においては、といったほうが確実かもしれない。お店や宿を下調べして予約する、移動手段を確保する、スマートに支払いを済ませる、云々だ。今時どこのドラマの世界だと呆れるところではあるが、まあ、要は、そうやってアナタのことを思って奔走しましたよ、そんな尽くし精神を欲しているのだろう。じゃあリードできる紳士なイケメンを目指そうとして、例えばその日の晩ごはん。何か食べたいものある? なんでも良いわよ。そう言われたから、今まで僕は思いつく限りのコンサルをしてきた。じゃあ和食は? 昨日天ぷら食べたじゃない。鉄板焼き? 臭いがつくでしょ。あそこに新しくできたハンバーグ? そこまでがっつり食べられないのよね。イタリアン? うーん、パスタの気分じゃないのよね。 そして僕は提案をするのをやめて、蝶みたいに行ったり来たりする彼女の気分がどこかに引っかかってくれるのを待つことにした。かれこれ3年も、待っている間の胃の痛くなるような沈黙を過ごすのが、彼女と会うときのお決まりになっているのだ。
見栄はって借りた車は完全にその見た目の雰囲気を重視した車種で、便利な機能がいろいろと削ぎ落とされているものだった。右折と左折を繰り返していたらあてにできるネオンの看板の矢印はここだけで、袋小路にたどりついた。助かった。袋小路にしろ、なんと隣り合って二軒も営業している。こんな住宅街でも需要があるのだろう。
僕は彼女に聞く。「どっちに入ろうか?」
聞きながら、どっちが正解か全力で考えながら。
部屋数が多くて確実なほうを選んだ僕たちは団地のような並びのひとつに案内された。多かれ少なかれ非日常を求めにきている男女に建売住宅のような場を通すとは興味深い。
彼女は荷物が多い。持ってあげようとしたら化粧品が入っているから底を掴めだの、その上着は室内用じゃないから置いていくだの、ぎゃんぎゃんされるため、とっくに自分で管理してもらっている。車の鍵を彼女の手に載せてから、その間にチェックインを済ませるのが、僕の役目だ。だから財布は置いていってもいいんじゃないか? 毎回思う。
フロントの料金表を一瞥する。どうやらここはスイスという名の場所らしい。健全に家族の団欒目的として2人以上で、休息の地として1人で、そのどちらで訪れることも可能なのだそうだ。
ここの経営者はヨーロッパの地を日本に持ってきただけで満足してしまったのだろう。フロントの建物は周りの住宅街の中にもあるような平屋。どこまでも日常風景を追求されている。まあ、ラブホの分際で旅館よろしく日本の地名をつけられても、それはそれで、だ。
駐車スペースから部屋へは一直線の階段が伸びている。そこを上がってくる、ヒールの音が近づいてくる。いつからだろう、この音に怯えるようになったのは。
朝が来たら、チェックアウトまでにちゃんと言おう。
別れてくれないかって。
*廃墟残
残りストック:2
*おまけ
みたいなことが繰り広げられている場所だったら面白いですね。いや面白くはないですかね。というメモです。まったくフィクションです。前後編? 裏表編? でございました。お目汚し失礼いたしました。(cf.女性目線隣廃墟→その159:ホテル京都「&」 - 廃墟ガールの廃ログ)
テーマは「3年目の浮気」でした。「藪の中」でもいいかもしれません。わたしはふだんまったく音楽を聞かない暮らしでして、カラオケも職場の二次会や三次会でしか行かないですし、基本手拍子の係なのですが、歌えと言われたらこれだけ歌います。この文章のひとたちが浮気しているのかはまったく知りませんがあくまでもテーマとして、です。
はじめ隣同士にある廃墟たちなのでひとまとめに紹介しようとしていたところ、こんなにどっちもカラーがあるし長くなりそうだなとなり、場所が場所ですし2つあるので男女で、と安易な考えに至ったのでした。このフロント? 管理宿舎みたいな建物が2つのホテル共通だったのかは分かりません。料金表や看板、インターホンなどほんとうに最高です。
(cf.かわいい看板ラブホテル→その130:ファッションホテル パステル - 廃墟ガールの廃ログ)