私たちは2日間のために生きている。
その前の5日間はただの修行期間に過ぎず、ひたすらに耐え忍ぶのみである。じっと息を殺してやり過ごした者にのみ、至福の48時間が訪れる――
ここに1枚の画用紙がある。
1日かけて、これを塗りつぶしていくのが私の仕事だ。私の他にも塗る担当が何人かいて、それぞれ色が決まっている。画用紙の形も毎日変わるが、基本的には広大な敷地を誇っているし、万が一塗りきれたとしても、画用紙にはつぎのページがある。
今日の形はこれだった。
すぐに赤色が右端から塗られる。少し楽しそうに、さながら公園で砂場遊びをする子供のように、色がついていく。次は緑が真ん中にこぼれた。遠慮知らずの大胆な一撃。続いて橙、紫、色面積の大小、時間差はあるものの、だんだんと白が減っていく。
そんな中私は、あの言い伝えのことを考えていた。古よりの伝承でそんな格言があるらしい。確かに私もなんとなく、聞いたことがある。
ひとはみな2日間のための5日間を生き延び、つかの間の休息と終わりゆく2日目の夜に安堵と憂鬱のため息を漏らすとかなんとか。
遅れながらにアクセントとなった黒いペンキも垂れていく。
でもよく考えてみてほしい。1週間は7日ある。そのうちの5日も犠牲にして、たった2日をつかみとれというのか。私は黒いペンキの流れを見つつ、姿勢を正して瞳の奥で叫ぶ。
くそが。5日も耐えられるかよふざけんな。バランスおかしいだろうが。金曜まで遠いんだよなクソ。って言えば満足かよ? 笑えねえわ。
滑りこみの緑色も現れる。これで大体の色は揃った。私はまだ、満タンでこぼれそうな青色のペンキを持っている。
要するに、私はいらついているのだ。伝承を受け入れる世界に。理不尽な怒号に。帰れない定時後に。何より、色のつかない現状に。色のつけられない、ぶつけられない私に。こうしてうじうじとSNSにわかった振りをしてつらつらとうだうだと書き連ねるだけで、誰に相談するでもなく、ひとりよがりに。そして苛立ったそばからもう、はじめの苛立ちが消えていく。覚えていられないのだ。そのことにまた、いらついていく。そんな毎日に、苛立っては落ち込み、先の休みをちらと思い、怒られ、空を仰ぐ。心の中では、指を立てて騒ぎながら。
手前の看板のところを、青にしたかったなあ。本日の色塗りは締め切られました。また、あした。
*基本データ
行った日:2018/04/21
廃墟になった日:不明
詳しく:
*評価
怖さ:★☆☆☆☆
廃れさ:★☆☆☆☆
入りやすさ:☆☆☆☆☆
*いいわけ
疲れているんだと思います。
何回かに1回かやってくる出オチ気を衒いシリーズです。なんとも中途半端ですが仕事って大変だなという文章でしたとさ。もっときちんと書く気力がないところがまた、疲れを表しているということにしておきます。ファミマまで遠いんだよなクソ。を入れたかっただけともいえます。また次からちゃんとした探検の記事書きます。