廃墟ガールの廃ログ

廃墟散歩の備忘録

その239:コンクリート桟橋【異世界能古島③】

 

 

*基本データ

 

場所:福岡県福岡市西区能古

行った日:2019/10/21

廃墟になった日:1945年以降(戦後すぐまでは稼働していた)

詳しく:西岸の採石場遺構。海軍が計画していた埋立地に使う材料を運ぶラインだった。能古島の東岸にも桟橋があったが沈んでしまった模様。

 


*評価

 

怖さ:★★★☆☆

廃れさ:★★★★★

見つけやすさ:★☆☆☆☆

 

 

*あれこれ

 

福岡県は能古島(のこのしま)におります。

前回の記事(その238:店舗跡&住居跡【異世界能古島①②】 - 廃墟ガールの廃ログ)で、たくさんのひととフェリーをともにし島におりたった廃墟ガール。島に着いてから知りましたけれど、植物園がいち観光地として有名な島なのだそうで、みなさんその植物園へむかうシャトルバス乗り場に一直線でした。

 

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一方、ひとりだけフェリーを降りて左に向かった人間(わたし)は、開かれた海沿いの道に終始感動しておりました。日本語圏以外の方に「綺麗」という単語を教えるときは、この画像を見せればこと足りますね。ごちそうさまです。


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パノラマでも撮っておきました。


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ひとりセルフタイマーくんと戯れていても、好奇の目をむけるひとすらおりません。(cf.セルフタイマー→その236:【お知らせがあります】製塩所跡【気まぐれ福岡/糸島市】 - 廃墟ガールの廃ログ)


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島で無料配布していた観光マップには、こちらの蒙古塚までしか情報が載っていません。公式の推奨範囲とはこちらでおさらばします。


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両脇が未舗装となりました。ずんずん進みます。


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左手はすぐ海です。波は静かなものでした。育ちすぎた手入れのなされていない草をかきわけ進みます。


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舗装道も終了しました。この道はなんの目的で造られたものなのでしょう。歩行者と、かろうじて自転車しか入れない規模です。釣りでもするのでしょうか。


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道路がなくなりましたので、お次はこんな道(といっていいのか分かりませんが)をずんずん進みます。


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時折顔を覗かせる、「人工」の跡をカメラに納めつつ、ともかく足を動かします。


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切通路用に舗装されているわけではないので、場所によってはこのくらい海が間近にあります。


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理屈はさっぱりですけれど、能古島の海辺の石はひらべったく楕円の形状をしているものが多かったです。潮水で削れて削れて辿りついたってやつなのでしょうか。たしかにこぞってひらべったく楕円ではありますが、それでも自然物なので個体差があり、それぞれが1番好みの姿で留まっているため、その平らと平らの隙間を踏めばひとたび、おまけに丸っこくとっかかりがありませんで、なし崩し的にあらぬ方向へ足が持っていかれるのでした。おはじきでジェンガをしている上をけんけんぱで渡るような感覚です。


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フェリーを降りてから1時間ほどは経ったでしょうか、そろそろ上着が邪魔になってくる頃合です。お姿が、見えて、まいりました。そもそも、能古島に行こうと思ったのは、この景色を、眺めるためなのです。


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Googleマップも航空写真にしないと現れない、魔法の橋です。「福岡市 廃墟」で調べ出てきたと思いきや地図をチェックすればなんと離島で、どうしようか迷いましたし、かなり歩きますし、旅の最終日でたまった疲れもありますし、なんてうじうじがすべてすっと消え去るほどのものでした。時間を忘れてたくさん撮り溜めた写真を出し惜しみなく残しておきます。


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もう、身につけているものひとつひとつを浜辺にポイ捨てして、身軽になって走っていきたいくらいでした。どんどん大きくなっていく姿に、目を奪われっぱなしです。


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粟立った全身で橋と海と空を吸いこみます。それしかここにはありません。来てよかったと月並みに安堵しましたし、感動で涙ぐむとはこういうことかも、と実感いたしました。


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ここから採掘した石をトロッコに載せていたのでしょう。(cf.採石→その95:大谷石山跡地【大谷資料館】 - 廃墟ガールの廃ログその186:【画像大量】アドベンチャーランド跡地【ジャパンスネークセンター】 - 廃墟ガールの廃ログ)


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そこかしこから観察します。


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雨風や潮に長らく打たれ、浜辺に無数に転がっている石たちのように、少しずつ形を変えているのだと思われます。


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橋の下に潜りました。たぶん、ここはどこか違う世界、異世界だったのだと思います。あの舗装された道が終わったあそこから、石ころの上に足を踏み入れた瞬間から、異世界だったのだと思います。異世界ってほんとうにあるんだ、おとぎ話だけの世界ではないんだと、そう感じました。こどもの笑い声、鳥の鳴き声、明かりのついた窓、カレーや肉じゃがの香り、忘れられた自転車、感覚が研ぎ澄まされていても、どうやったって「他人」は存在せず、わたしだけだったのです。あるのはからんとした空、恐ろしいほど穏やかに繰り返す波音、行ったり来たりもどかしい波打ち際、無限の海、この橋だけです。海の下に、この橋の続きは潜っていくのではないでしょうか。ほんとうはレールはまだ続いていて、どこかへ行けるのではないでしょうか。なんて、なんて眺めなのでしょう。残酷なほど美しい世界です。


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もう、言葉はいりませんね。というか、出てきませんでした。でもいつか、ここをモデルにしたおはなしを書いてみたいななんて、ひっそりと考えています。


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名残惜しいですが、いつかまた来れるようにと誓いつつ、来たときに撮った写真たちの逆再生をしながら、じわりじわりとさようならしました。「フォトジェニック」、「インスタ映え」と、ひと単語で片づけるにはあまりにも神々しい景色でした。


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橋がなくても、海がレーション(カロリーメイトです)によく映えます。帰りの足どりは軽く、行きの半分くらいの時間でひとのいる場所に戻ってくることができました。

当たり前です、異世界帰りなのですから。


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ガソリンスタンド跡地もレトロで愛おしく、カメラに写していましたらおばあちゃんに「なに撮りよったと?」と話しかけられた現場です。(cf.ガソリンスタンド→その26:ガソリンスタンド跡地【岐阜県養老郡】 - 廃墟ガールの廃ログ)


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最後に異世界から帰還しましたのち、次のフェリーが出るまではこちらにお世話になりました。由緒ある飲食店をリノベーションしたかのような内装でした。店主のお母さんにお話を聞きましたところ、島は700人くらいが住んでいるそうです。中学校までしかないため、高校はみんなフェリー通学なんだとか。店主様の娘さんはいま東京の大学に通っているけれど、野菜がおいしくないとこぼす便りがあるのだそうです。お話が聞けて良かったと心から思いました。

 

 

*廃墟残

 

残りストック:5