9月にはシルバーウィークがあったが、今年に限っては銀色、第2位といわずとももっと大きな顔をしていてもよかったのかもしれない。5月の我らが黄金様は空気だったかのように大人しくなっていたからだ。もっとも今年に限っては(2回目)その対応がもうそれはそれは正しく大正解で、シルバーのほうだって万年第2位からの脱却の格好のチャンスだと勘違いして威張り散らしてはいけなかった。世間の情勢をしっかり汲み取った連休たち、堂々とお出かけできるようになる日々の戻りを待つばかりである。
それで初日の19日、始発レベルに早起きして高崎へ、そして5番線から出る電車へ乗った。これは早起きできた我らを褒めるために撮ったもの。8:50発に乗れなければ早朝の高崎駅で33分間踊りでも踊っていないといけなかった。ええと5番線というのはつまり信越本線のことです。
「リユース、リデュース、リサイクル、あと2R必要だ……」
このあと調べたらレールの上を歩かない、とか全部railから始まるRだった。
終点で降りる。そもそもフェスやバエの狙える飲食店などにそこまで興味はなく、廃れた場所はもともと密にはなりにくい。まず密なら廃墟にはならない。この日だって東京から2.5時間離れた30分おきにしか電車の来ない終着駅に来ている。
群馬はその186:【画像大量】アドベンチャーランド跡地【ジャパンスネークセンター】 - 廃墟ガールの廃ログぶり。
空が高くきれいな秋晴れ。鉄道博物館があるので時間まで少しだけぷらぷらする。ジオラマの中を走る模型や鉄道グッズばかり揃うガチャガチャを見る。
「このトーマス、時間外労働50時間って感じじゃない?」
「ブラックだね……」
朝早いためそんなに余裕のある行動はとっておらず、程なくして時間となる。アーチ型が特徴的な入口を横目に移動。
ここで遅ればせながら5R運動の大喜利やブラックトーマスでわいわいしているメンバー紹介を。突然始発で群馬に行くことを提案してくれたのは中学からのおともらち紫芋ちゃんである。おそらくいわゆる悪友というやつである。中学のとき『シュガシュガルーン』に憧れて魔法のステッキを手作りしようと騒音を恐れ紫芋家の屋根の上でホームセンターで買ってきたステッキの軸になる予定の木材をパン切り包丁(これしかなかった)で一生懸命切ってハンドメイドしたり(すごく重いステッキができただって木だもの)、クリスマスに鎌倉の縁切寺に遠足に行ってみたり、成人式に原宿の竹下通りにあるロリータ服のお店で上から下まで買って着替えてマイ成人式をしたりしてきている。最近でいうと行川アイランドまで遠足したり(その131:行川アイランド&行川小学校 - 廃墟ガールの廃ログ)、オリエント急行に乗ったり(その152:ORIENT EXPRESS【LE TRAIN】 - 廃墟ガールの廃ログ)、丸ノ内線全駅降車企画(丸ノ内線散歩企画【28駅全制覇】 - 廃墟ガールの廃ログ)をしたりしている。あの紫芋ちゃんである。いつもありがとう。
初めて来たのに落ち着くような雰囲気の観光案内所で受付をする。この日はカメラも借りて準備万端のはずなのに、なぜか1枚上のツーショット以外写真が撮れていないが、トロッコに乗ったのである。ガタガタ揺れ急勾配を登るトロッコ。ご家族で来て、特にとてつもなくテンションの上がっている息子さんと来ているグループが多かった。
丸山駅での乗り降りはできないが、文化村駅を出て途中で5分間停車してくれる。ありがたやありがたや。
なぜってここは駅名の通り「旧丸山変電所」があるから。廃スポットである。
建物は煉瓦造の2棟からなる。まず手前のこちらから。横長の佇まいが少し学校のような印象にもとれる。かわいらしい。
左手がもう1棟、右手が撮りそびれたトロッコのお姿。伸びる電線とレール。お散歩日和だし実際にお散歩している。もうちょっと澄んだ空を撮れれば良かったし、実際にもうちょっと澄んだ空だった気もするのだけど、写真を撮るスキルがいかんせんクソ。高校の時写真部だったって金輪際名乗り出ないほうがいいかもしれない。何度か書いているけれど。
この写真で左手にあるほうが変圧器搭載、右手のほうが蓄電池搭載でそれぞれ機能を全うしていたもよう。機能性もデザイン性も兼ね備えた建物。生産性の低いくせに社畜であるわたしよりもハイスペックだったことは間違いない。変電所というと思い出すのは東京のこちら(その211:旧日立航空機株式会社立川工場変電所 - 廃墟ガールの廃ログ)。まるきり特徴が異なるけれどどちらも好き。
しかし、テンション上がってぽやぽやしていたからか、この看板の前の駅ホームから続く階段を登ろうと体勢を変えた瞬間、盛大にすっ転ぶ。石の階段に頭を打つ。両手を血だらけにする。両手にアザを作る。死守しようとしたお高い借り物のカメラは大事にはならなかったが、朝10時にして満身創痍となってしまった。なんなら、旧丸山変電所を見に来たわけではなくて、まだまだこれからである。始まる前からクライマックスだぜ! この歳でこけて擦り傷作るとは思わなかった……。
峠の湯駅に着き、優しいスタッフのお兄さんに絆創膏と消毒液をいただく。怪我があっては大変。これからが本番だからである。なにやら奥の方に集まっている人たちがいる。わたしたちもそこに混じってヘルメットと懐中電灯をもらう。安全第一ですのでね、とみんなでラジオ体操をする。1/1000くらいはすでに傷を負っているわたしに釘を刺すために言われたかけ声かもしれない。トロッコに乗っていた1/3くらいの人が残っただろうか。長袖長ズボン、リュックにトレッキングシューズの出で立ち。はじまる、はじまる。